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僕のカルチャーセレクトショップ

kindle unlimitedで『バーナード嬢曰く。』でゴセシケ

 キンドル・unlimitedが1月と2月でそれぞれ99円というセールをやっていたのでそんなに安いならと、以前から少々興味があったのも手伝って利用してみました。アマゾンプライムに加入していれば、Prime readeingなるサービスがあって、ある程度の電子書籍をサブスクで読むことができるんだけれども、unlimitedは一気に読める冊数が増えるのだ。ただ、電子書籍のすべてが読めるというわけではなく、アマゾンが指定した
書籍の範囲内だけど。お試し期間が終わると980円になるが、それでもサービスを続けてもいいかなと思う僕はまんまとアマゾンの術中にはまっているようだ。


 では僕はこの一か月でどんなものを読んだかというと、活字のものよりは短時間で読める漫画や雑誌がほとんど。一回ダウンロードすれば、冊数制限はあるけれど、WIFI環境がないところでも読めるのはうれしい。サブスクは使えば使うほど元が取れる仕組みだから、例えばちょっと高い雑誌やムックを購入すればもうそれで元が取れる(気がする)。特に僕のよく読むアメカジ系雑誌「Lightning」や「2nd」がほぼすべての号に渡って読めるのでコスパは良いと思います。買えば一冊2千円くらいする別冊も過去の号も、いとも簡単に読めるので暇つぶしにベストな仕組みですな。

 

 また、普段ならきっと買って読まなかったり、読もうとすら思わない漫画なんかも、トライしてみると意外に面白かったものもあり、重宝してます。まずその筆頭がバーナード嬢曰く。だった。

怒涛の全六巻

 つっても読んだの1巻だけなんですけどね。
 お金を出して読もうとは思わないちょっと雑な感じがする絵柄が、読んでいくうちに気にならなくなっていく。内容が様々な図書に関する蘊蓄に溢れており、それもまた僕の琴線に触れたのだ。読書漫画ってなんか嫌味になりがちなんだけど、絵柄とギャグがそれを完全に打ち消している。

 

 図書館にいつもいる女生徒町田さわ子は一見読書家に見えて、実は一冊も読んでいない。そしてそういう彼女がなんとなく気になる遠藤君と、図書委員の長谷川さんそして唯一の本気の読書家神林さんが織りなす日常系文学ギャグ漫画である。

この子がさわ子

 特に僕に刺さったのが、突っ込み役でサデスティックな性格の神林さんが重度のSFファンであるというところだ。こんなにSFに詳しい女子高生いないでしょ!と思うのだが、そこはファンタジーとして機能している。僕も彼女ほどではないが、SFを少々嗜みそこそこ図書館に通っていた高校生だったから、余計にこの漫画がいとおしく思えるのだな。スターウォーズブラックホール(いつの間にかディズニープラスから消えたらしい。すぐにディズニーはブラックホールを観られるようにしろ!)でSF映画に熱中し、映画雑誌「ロードショー」のブレードランナーの記事にしびれ、中2で映画「ブレードランナー」を渋谷の劇場で見るというラッキーな体験をしております。

   何度見ても素晴らしいオープニング。ダグラス・トランブルの神業

 TVスポットのスピナーが飛ぶ様子に度肝を抜かれた僕は確か正月に世田谷のおばあちゃんちに行って、バスに乗って東急のでかい劇場で鑑賞した。そしてその後本屋で見つけたディックの『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』(当時はブレードランナーの表題で発売していた)を購入したのが本格SFとの出会いだった。

漫画でも触れられているディックの新装版。表紙がカッコイイね

そしてこの記事

 機動戦士ガンダムの小説版も読んだし、スターウォーズのノベライズやアラン・ディーン・フォスターの「エイリアン」のノベライズ(これは中1だった)を読んでいた。あれ、そういえば「2001年宇宙の旅」も読んだはずだけれどいつだったかもう覚えてないなあ。


 そうだ、中2で筒井康隆に出会ったのも大きい。あの頃本屋に売っていた筒井康隆の文庫本は全部買って読んでたっけ。そうして高校生になって全集が刊行され、それが毎月高校の図書館に配本されるのでしょっちゅう図書館にいたのだ。ガンダム流れでハインラインの「宇宙の戦士」も読んだんだけど、このころのハインラインはまだ僕には敷居が高かった。一応全部読んだと思うんだけど、クモ型宇宙人とパワード・スーツの闘いという印象しか残っていない。


 あっ、今思い出したけど、僕高校生の時図書館で旧約聖書を借りて読んでいた。なんでかっていうと、当時SOFT CELLが出した傑作アルバム「This last night...in Sodom」

今やCDはプレミア。レコードは何故か安い。つうかアマゾンミュージックで聴ける

               

を聴きまくっていて、其の出典であるソドムに対しての興味がわいたからだ。堕落と淫蕩の限りを尽くした都市、ソドムとゴモラは神の怒りによって滅ぼされ、その様子を見たものは塩の柱となるという話だった。

  上記の曲、「サレンダー」では歌詞に「sodom and gomora come tomorrrw I want know you from Adam & Eve」というくだりがあり、それをヒアリングできたとき、妙に感動したもんだ。冒頭の歌詞、「独りだ・・・僕はコーヒーに溶けてしまいたい」というところも最高。

 妙に旧約聖書に興味を持った僕はその後「はじめに言葉ありき・・・」から頑張って半分くらいは読んだ気がするんだけど、これって宗教的興味よりかは古事記を読む感覚に近いと思うな。あとどちらの本も人の名前や神様の名前多すぎ。

 十代の僕は結構好きなミュージシャンに感化されて本を読んでたなー。キュアーの「Killing an Arab」

このころのロバートカッコいい!あとなぜかタイトルが「killing another」って

カミュの「異邦人」をモチーフにしていると知るや、頑張って読み、テレビでやっていたマルチェロ・マストロヤンニ主演の映画「異邦人」をビデオに録画して見るくらいにハマってたっけ。当時、感化された僕は何かにつけ「太陽がまぶしかったから」とか言って誰にも理解されなかった。

監督はなんとヴィスコンティ



 ここから不条理文学という世界を知り、カフカにたどり着いた。当時僕は運動が苦手で、特に柔道の時間が嫌で仕方がなかった。そういう運動に対する劣等感をこういう文学作品を読むことで「運動がなんだ。僕はカフカを読んでいるんだぞ」という意識が生まれ、自尊心のバランスをとっていたのだ。なんだかなー。体育のある前の日夜中の2時くらいまで『審判』を読んで、寝不足で学校へ行き、文学青年を気取っていたがバレーボールでは全くのボンクラでした。

 
 『バーナード嬢曰く』の話に戻ると、ああその通り!と思う部分が結構あって、特にグレッグ・イーガンの作品に登場する科学的記述のくだりが全く意味不明だという話で、SFファンの神林は「実は私もよくわかっていない」と告白し、さらには「イーガン本人にすらわかっていなのでは」という仮説をぶち上げる。そうして最後には
「ハードSFを読むうえで求められるリテラシーとは「難しい概念を理解できる知識を持っているか」ではない
「よくわからないままでも物語の本質を損なわずに作品全体を理解するコトが可能な教養のラインを感覚で見極められるかどうか」
「でもグレッグ・イーガンはすごく面白い!」
という言葉で締めくくられるのだが僕のSFを読む姿勢もこれに通じるよな。


 そのほかこの神林さんはSFこども図書館シリーズも読んでおり、なんとそこで出てきた作品が『合成怪物』!

高!9280円というプレミア価格

 ああ!僕これ小学校のとき読んだぞ。多分4年生くらいだと思うんだけど、教室の後ろにこのシリーズが全巻そろっていてそれで僕全部読んだのだ。他にも『宇宙家族』とかがお気に入りだったっけ。たしか子供の一人の名前が「マイク・マローン」で、しかもその名は自分でつけたということだけを覚えている。

 

 Sfこども図書館のことについてはこちらに昔書いています。SFこども図書館シリーズが刺さったあなたは是非どうぞ。

 

そうして記憶を呼び起こされたあなたは、こちらでさらに呼び起こしてください。

 とにかくこういうところからも僕の現在の趣味嗜好が形成されているのだな。そして『合成怪物』からの極めつけのキーワードがゴセシケ
 あったあった!ゴセシケ!合成神経細胞群塊、略してゴセシケ 

 僕も漫画の神林さん同様に少し興奮してしまった。しかしながら漫画の他の登場人物にはピンとこない。そりゃそうだろう。しかもここで新版・旧版の話になるのだが神林さんは新版の『合成怪物』(改題)を読んでおり、真の旧版は『合成脳のはんらん』だったという事実が判明する。僕は年齢的にこの『合成脳のはんらん』を読んでいるはずだ。ちなみに今のタイトルは『合成怪物の逆しゅう』だそうです。
 ゴセシケなんてこの漫画読まなければ一生思い出さなかった。


 さらにはこの漫画、絵本の話に触れており、僕が結構はまっていた凶悪スプラッターバイオレンス童話三びきのやぎのがらがらどんが紹介されていた。

僕の絵本記事。最後に少しがらがらどんに触れてます

 

 こちらは結構有名なので知っている方も多いでしょう。僕は娘にこれを買って何度も読み聞かせたっけ、最後のえげつない場面も含めて。

 

 この『バーナード嬢曰く。』、すごく面白いけど、キンドルunlimitedで読めるのは一巻だけなんだよね・・・。この後6巻まであるが、買うのはナー。そう、unlimitedに対する不満はこれで、一つの作品が中途半端な巻数までしか読めないのだ。どうせなら全巻にしてほしい。

 

 さてまた新たな作品を探しに行きますね。

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