半年くらい前に職場の近くの図書館が廃棄図書を放出し、僕はホクホクでそこから十数冊の本をいただいて帰ってきた。
そんな本たちを幾冊か読んだので、どんなもんか書き留めておきます。正直、あんまり面白い内容で書いてないです・・・。
「リヴィエラを撃て」は結構なボリュームのポリティカルクライムサスペンス。
アイルランドという我々にはあまり馴染みのない国が舞台であり、IRA(アイルランド共和軍。北アイルランドをイギリスから独立させ、アイルランドを統一することを目標とする組織でその手段としてテロをも辞さない。かなり複雑な歴史的・思想的背景アリ)に所属する父親を失った少年ジャックが自身もまた運命に逆らえずテロリストになってゆく。ジャックの父親を殺したと思われる「リヴィエラ」なる人物を追う過程でCIAやMI6などの各国の諜報機関が入り乱れ、何人もの人間が運命に翻弄され、命を落としてゆく。かなりのスケールと詳細な描写でまるで極上のスパイ映画を観ているように読みだすと止まらないタイプの本だった。時代背景が1990年代あたりなので、あの頃青春真っただ中であった僕には、妙に懐かしい感じもした。
そういえば、「リヴィエラ」という名前はウィリアム・ギブスンの傑作「ニューロマンサー」に出てきた、相手に幻覚を見せるハッキングを得意とするキャラクターにもつけられていたっけ。
「虹の岬」は歌人川田順の晩年を描いた小説。70近くになって、作歌指導をしていた女性と不倫関係になり、自殺未遂を経て結婚、という壮絶な生き様を彼の視点から淡々と描いた作品。最初僕はなんの前知識もなく読み始めたのでフィクションかと思っていたが、窪田空穂や𠮷井勇などの知っている歌人の名前が出て来るに至ってこれが実在の人物をモデルにした小説だと気づいた。歌人川田のことは殆ど知らなかったので勉強不足。少しだけ僕の好きな塚本邦雄のことが言及されていて、おっ、と思った。塚本で有名なのは
ですかね。あと僕が好きなのは
「英雄」を聴かさるる夏指揮者勝手にしろ百日紅
です。いまうろ覚えで書いたので合っているかどうか不安。
「推古天皇」はご存じ聖徳太子がその摂政を務めた女性天皇の一代記。朝廷の基盤がまだ蘇我氏に依存しており、その狭間で危ういバランスを取りながら女性天皇として政務に当たる推古天皇を半ば超越的な存在として描いた作品。出てくる人物関係が複雑すぎて(親王や蘇我氏の一族が入り乱れ、また名前がややこしい長々しい名前で登場する御子たちを把握するのが困難。つうか途中までは系図を見ながら読もうと頑張ったのだけれど、もう途中から放棄。聖徳太子を聖人として扱っていないところ、興味深い。
「隠猿の剣」は江戸で起きた不可解な殺人事件を中心に推理小説的展開を見せる剣豪もの。ラスボスをやっつけたと見せかけた描写が出てくるのだが、残りのページ残数でそれがミスリードだとばれてしまう展開はいかがなものか。申し訳程度に添えられたラブコメ要素あり。
「高橋和巳短編小説集」はどの話を取っても明るさが無い、ごりごりの戦後自然主義系純文学。戦中戦後の混乱期を舞台にした、どうあっても光が見えない生活を続ける人々がこれでもかというくらいに登場し、ひたすら暗い気分になる作品群。特に最後の作品が絶望的で、久々の純文学の暗い海を泳いだ読後感。
今日はこれでおしまいです。おやすみなさい。