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ようやくヘヴィトリップ

 丁度今(2021、9月現在)アマゾンプライムで「ヘヴィトリップ」が100円で観られるようになっているのだ!やっと観られたぜ。みんな~!見ようぜ!

            この予告編を見れば大体どんな映画かはわかる

   

 

このブルーレイのジャケット・・・

 

 ネタバレありますよ。

 予告編のアオリでは「号泣!爆笑!」などと書いてあるが、号泣は言いすぎかな。コメディにかなり力が入っている分わざと感動させてやろうという姿勢は感じられないからこそ、そこにより好感が持てる。とはいえ「爆笑」に関しては僕は少なくとも10回以上はしました。

 メタル好き(特にデスメタル)にとってはこれ以上ない絶妙なネタとキャラクターがとにかくグサグサと突き刺さる面白さ。負け犬たちがあがいて最後は大団円というパターンは王道だけれど、素材がデスメタルというニッチなところに絞っているのが素晴らしい。よく作ったな。日本でも「デスメタル」という単語を使った映画はいくつかあったけど、ここまで真正のデスメタルバンドではなかった。

 

 主人公トゥロは25歳の青年。北欧の国、フィンランドのド田舎で友達と組んだバンドでなんと12年も地下室で練習してきた。結果、無駄にテクニックが磨かれ、演奏やパフォーマンスはプロ並みだ。でも田舎なので、一度もライヴ経験はナシ。

 ああ、そういえば僕も高校生の頃、農家を営む後輩の家の納屋の二階でバンドの練習をしたっけ。僕の家から自転車で一時間近くかかるその家にベースを担いで日曜日ごとに訪れていたが、その家が近づくにつれ、他の友人たちが演奏しているラウドネスが青空に響き渡っているのが聴こえてきて「おっ、今日はブラックウォールやってんな」とか思いながらペダルをこぐ足に力を入れたもんだ。

 高校生のコピーバンドが演奏していたヘビメタは周りに大音量でダダ漏れだったが、周囲の家の人や親はどう思っていたのだろう。まあ田舎で昼間だったから大丈夫だったのかな。今あの建物はあるのだろうか。

 

 さてトゥロのバンドはライヴをやるためにオリジナルソングを作ろうとする。ちなみに僕が一番受けたのはそのくだり。何かいい曲のアイディアはないかと聞かれたギターのロットヴォネンが「いくつかある」といって最初に弾いたリフ(ギターのフレーズのこと)はメタルファンなら誰でも知っているであろうパンテラの「WALK」!

               

 このリフを弾いた時点で僕は腹を抱えたのだが、さらにはベースのパシが間髪入れずに「パンテラ、WALK」と指摘するんでもう可笑しくて仕方がない。

 そこで次に別のリフを弾くのだがやはりすぐに「チルドレンオブボドム」とバレて、次に弾いたリフも「モルス・スビタ」と指摘される。この場面はメタルに興味がない人からすれば何が面白いのか分かりずらいのだが、どんどんバンドがマイナーになってるんですよ。

 チルボドはともかく、僕もモルススビタとか知らねえ!ちなみにそこで出てくるのは「The sermon」という実在する曲です。そんでもって何が凄いかって、ロットヴォネンが弾くパートってイントロじゃなくって途中のリフなのよ。でもパシはすぐに解るという。一瞬ドラムスのユンキが「すげえな」って顔でそのやりとりを見ている画が挿入される。こういうところでパシがいかにメタルマニアであるかということが分かるようになってるんだけど、普通わかんないよね。

           モルス・スビタはすごいかっこいいぜ!アルバム買うかな

    全部パクリだとバレて、ロットヴォネンはこれならどうだ!とヤケクソ気味にギュギュギュイーン!とギターを適当にかき鳴らすのだが、それさえも「クルシファイド。ネクロブッチャー・オブ・インターナルレギオンズ」と冷静に指摘され、ロットヴォネンはギターを置いて(決してギターを投げ出したりはしない)外へ出ていき「うぉおおおおおおお!」と絶叫する。

 まあそのやり取りだけでも十分に面白いのだけれど、二重に面白いのはモルス・スビタまでは実際にいるバンドなんだけど、ネクロブッチャー云々というバンドが実在しないところだ。ロットヴォネンは絶対にこれならいねえだろ!というつもりでいい加減に弾いたリフが存在するというギャグになっているのですよ。つまり星の数ほどいるデスメタルバンドやブラックメタルバンドには、そういうバンドいそうだよね、という面白さ。

 ※さらにどうでもいい知識なのですが、ネクロブッチャーという人物はいて、この人は伝説のブラックメタルバンド、「メイヘム」のベーシストです。メイヘムはこれも北欧ノルウェーブラックメタルバンドで過激に走った末にメンバーが自殺とか教会を燃やすとかしてある意味伝説になっている。

 

 さてそのパシは後半白塗りのメイクをして、トナカイの角の生えた帽子をかぶり突然「オレはクシュトラックスだ」と名乗りをあげるんだけど、どう見てもダサい。しかし初めてその姿を見たロットヴォネンは開口一番

「カッコイイじゃねえか」

だって。最高。そう来なくちゃ。

 

 そうそう、バンドはようやくオリジナル曲を完成させます。それがこれ。PV化され、日本語字幕までついている。映画内でのトゥロの人生にきちんとリンクしている歌詞なのだ。

        最初に「みんなで歌う」という字幕が出る。作った人、分かってる!

   www.youtube.com

 演奏がバッチリいったあとの、メンバーの充実した顔のリアリティがすごい。僕もバンド現役の頃はこういう高揚感があったよなあ、ということをふと思い出した。ああいう体験、死ぬ前までにまたしたいなあ。コロナが開ければ、ギリギリ間に合うだろうか。間に合わないだろうか。バンドやりてえ。

 

 ネタバレあるとかいって、実際映画のことほとんど書いてないね。まあこの映画に関しては、他のメタルファンがいろいろと言及しているので興味がある方はそちらを読んでいただければ。

 

 ライヴがクライマックスという点では僕の書いたこの小説とも共通。じわじわ読まれ2万PV

kakuyomu.jp