音楽と本

僕のカルチャーセレクトショップ

ツツイストとしての自己再確認

 小さいころから本をまあまあ読んできた僕ですが、本格的に小説をむさぼるように読み始めたきっかけは筒井康隆氏の作品だった。中学2年生の時に友人がこれむちゃくちゃ面白いから、といって勧められた短編集『日本列島七曲り』がその後の僕の読書人生を決定づけた。

この不気味な表紙ね 

日本列島七曲り (1974年)

日本列島七曲り (1974年)

 

  SF小説というくくりではあるけれども、氏の作品はそれを超えたもっと広い範囲でのエンターテイメント性を持っていた。初期の氏の作品は日常が突如ふとしたきっかけでズレてゆき、とんでもない結末を迎えるものが特徴的だった。「毟りあい」とか「君発ちて後」など、うわそんな展開になるのか!と中学生の僕を大いに驚かせてくれたものだ。「トラブル」なんて作品は人間に寄生した宇宙生物がその体を自在に操り変形させるというアイディアが使われているのだが、この作品は「遊星からの物体X」や「寄生獣」などよりもずいぶん先んじているはずだ。クライマックスの都心でのすさまじい殺戮描写は今読んでも震撼する。また「乗り越し駅の刑罰」はある種の不条理文学とも取れるんだけど、切符をなくしただけで最後には恐ろしい結末を迎える(猫の顔をした紳士が登場するという意味不明さも相まって)という展開に中学生の僕は怖気をふるったものだ。中学を卒業するまでには10冊以上の筒井作品の文庫本を買っては読んでいた僕だった。


 その後高校に入学し、あるとき新聞で「筒井康隆全集」が刊行されるという記事を発

見!

本人が「私の最初で最後の全集だ」と言っていた気がする

筒井康隆全集 全24巻セット

筒井康隆全集 全24巻セット

  • 作者:筒井 康隆
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • メディア: 単行本
 

  うわあ欲しいなあ、でも毎月買うお金はないなあと思っていた矢先、なんと学校の図書館に入庫されているのを発見。図書館によく顔を出してはハインラインの「宇宙の戦士」などを意味も分からず借りて読んではいい気になっていた僕はさらに足繁く学校図書館に通うことになる。

 配本日には図書館に飛んでいき、いの一番に借りては至福の読書体験をしたものだ。そういうことをしていたらいつの間にか僕は図書館図書の借り手としてはダントツトップになっていた。

 あの頃僕は筒井氏の作品以外にも、キュアーの名曲「キリング・アン・アラブ」に影響されてカミュの「異邦人」を読み不条理文学を知り、

            ライヴバージョンは荒々しくていいね

     その流れからカフカの「審判」を読み、「耽美派悪魔主義」という言葉に惹かれて谷崎潤一郎の「刺青」「春琴抄」「卍(まんじ)」「痴人の愛」などを濫読した。谷崎潤一郎は最終的に「細雪」まで読むに至り、本ばかり読んで受験勉強をほぼしないまま浪人するという結果を残した。

 

 それはともかく、司書の女性の先生がそういう僕を賓客として扱ってくれ、僕が顔を出すたびに嬉しそうな顔をしてくれたっけ。そうして卒業式の日、彼女が僕にリボンを掛けた封筒を記念として渡してくれたのだ。僕はてっきり図書券をくれたのだと思って開けてみるとそれは僕が3年間かけて借りた本がすべて書かれている貸し出しカードでした。裏表びっしりと本のタイトルが書かれたカードが5枚くらいはあったかな。しかし正直、いらねえ!と思ったね。

 

 さて多感な時期に読んだおかげでその後の僕の人格形成に多大な影響を及ぼしている筒井作品ですが、「パプリカ」あたりで一旦止まり、

 最近「おとうさん、パプリカ知ってる?」と子どもに聞かれてこの小説のことかと思った

パプリカ (新潮文庫)

パプリカ (新潮文庫)

  • 作者:筒井 康隆
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2002/10/30
  • メディア: 文庫
 

ツツイストにとってはパプリカといえばこれ。早世の天才、今敏の傑作

www.youtube.com

ここ数年はあまり読んでいなかったのです。多分「銀齢の果て」と「敵」くらいしか読んでなかったんじゃないのかな。しかし最近こちらの二冊をブックオフで買い、相変わらずの氏の作品の素晴らしさを再認識したのです。

こんな小説筒井氏しか書けない 

 

 これは筒井氏のバロウズ化か

ヘル (文春文庫)

ヘル (文春文庫)

 

 

 しかし本題のこの二冊の話に入る前に力尽きました。また続きをそのうち。

 

多かれ少なかれ彼の影響あるのは否めない

kakuyomu.jp