その昔、30年以上前に千葉テレビで放映していた「テレジオ7」という洋楽番組があった。男性2人に女性1人のビデオジョッキーが様々な洋楽情報を発信しており、そこで僕はたくさんのバンドを知ることができた。主にイギリスのバンドを中心に紹介しているのも嬉しくて、その頃の一番の花形はなんといってもデュラン・デュランとジャパンだった。この二つのバンドは別格として時にマニアックなバンドも紹介してくれるので、洋楽情報の少ない田舎の学生にとっては非常にありがたかった。わずか30秒しか流れないバンドなどにもインパクトがあって当時中学生だった僕は友人と共にそのあたりのバンドを漁ったりしていた。
その中に例えばブルー・ズーとかパナッシュとか今となっては誰も知らないようなバンドもいて、何かの機会にふっと懐かしく思い出すことがあるのだ。
そういうバンドについてはまた別の機会に書くとして、そのテレジオ7で強力に一時期プッシュしていたのがカジャ・グーグーだった。
当時人気絶頂だったデュラン・デュランのキーボーディストのニック・ローズがプロデュースしたという触れ込みで鳴り物入りのデビュー、満を持してののPV公開でこちらの「君はTOO SHY」が流された(PVではありませんが)。
ルックスがよくて、演奏も上手い!
デュラン・デュランとはまた違うキャッチーなサウンドで一聴して耳に馴染む名曲だ。キーボードのむーんという音が鳴り響く中、ベースのスラップが入ってくるところなど、今聴いてもかなりのセンスとテクニックが感じられる。このベースのフレーズものすごくカッコよくて、ベースを始めたばかりの高校生の僕は弾きたくて仕方がなかったのだけれど、いかんせんスラップのやり方がわからず、かつその力量も無かったので仕方なくピックでU2などのわかりやすいバンドをコピーしていたっけ。今の僕なら弾けるこのフレーズ、開放弦をかませた非常にトリッキーなフレーズで、これだけでも彼らがただのアイドルバンドではないという一端を示している。
僕はすぐにアルバムを買った。
この日本盤はジャケットや曲順が違ったようで原題の「WHITE FEATHERS」とは似ても似つかない「君はTOO SHY」というそのままのタイトルで、いかにもアイドルイメージを押し出した感じのジャケットだった。
だがこのアルバム、見た目と違いポップ&キャッチーではあったが中々の佳曲ぞろいだ。多感な時期に聴いていたということもあるのだろうけれど、今でもたまに引っ張り出して聴いてはあの頃のことを思い出すのです。
まず一曲目の疾走感たっぷりの「ホワイトフェザース」からしてすばらしい。
当時最新のサウンドを目指していたであろう彼らのドラムはシモンズのエレキドラムで。その音がバリバリ80S感を醸し出しているのだが、ギターのディストーションがかったフレーズや中間部のフレーズなどはロックスピリットさえ感じさせる。
捨て曲がまったくないといってもいいこのアルバムからは何曲かがシングルカットされている。
どうやってキーボードを弾いているのかまったくもって分からない(おそらくシーケンサーを使っている?でもビデオは手弾きだ・・・)ウー・トゥー・ビー・アー。
後半のサビで一度ブレイクした後に、すかさずベースがブーン!とフレットを下がっていくキメもカッコいい。
また叙情的な「ハング・オン・ナウ」もピアノのソロが素晴らしく、彼らの別な魅力を感じることができた曲だ。
そうしてアルバム最後に収録された「フレイヨー」にはベースのニックの会心のソロが入っており、カジャグーグーすげえな、と当時思っていた。
確かその年の大晦日に、ビートたけしが国内外のヒット曲を紹介するという番組があったのだけれど、その時にこのカジャグーグーが紹介された。この変なバンド名を聴いた瞬間、殿は
「なんだその名前!ヨッチャンのザ・グッバイ(当時人気絶頂だったジャニーズアイドル、たのきんトリオの野村義男氏がトリオ解散後に結成したバンド)のほうがよっぽどましじゃねーか!」
とツッコミを入れていたっけ。まあザ・グッバイもどうかと思うけれど。
しかしカジャ・グーグー、諸般の事情からヴォーカルのリマールが脱退(クビ?)になり、4人組になってしまう。一体どうなるのかなあと思っていたら、くだんのテレジオ7でやはり速報として新曲の「ビッグ・アップル」が流された。
それまでのエレポップ/ニューロマンティックサウンドから、更にファンク寄りになったサウンド(サックスのフレーズがいきなり飛び出す)にびっくり。そしてヴォーカルはベースのニックになっていたことに二度びっくり。いい曲だったが、ニックのヴォーカルはイマイチ弱かった。
すっかり雰囲気が変わったカジャ・グーグー、僕はこれはこれでいいじゃないか、と思っていたらしばらくしてこの「THE LIONS MOUTH」が発表された。
すっかり音楽的に成長し、まるで別バンドのようなサウンド。ベースもスティックという複雑な奏法が要求されると思われるエモノにチェンジ。加えて何らかのメッセージ性を持ったプロモビデオなど新たな彼らの可能性を示唆する素晴らしい曲だった。僕はこの曲のサビの部分のバックでツッツーッツーツーと鳴り響くキーボードのアレンジが好きだった。伝わらないかなー、たまにこの手のアレンジを聴くことができる曲に出会うと無条件で気に入ってしまいます。そして二番目のサビで出てくるコーラスの
I don’t think so
というフレーズも大好きでした。
いやあ、カジャ・グーグーどこへ行くのだろうかなーなんて思っていたら更に彼らはトンデモない曲をぶち込んできたのです。
TOO SHYからは想像もつかない
多分以前にもこの曲の魅力を書いたかもしれないけれど、誰もそんなこと覚えていないだろうし、読んだことのある人もほぼいないでしょうから書きますが、ふよふよ、ふよふよという不安定なキーボードのフレーズがずううっと鳴り響く中、ファルセットを絡めたトリッキーなメロディのヴォーカルが入ってくる。そして要所要所の「ぽわわーん」と入ってくるフレーズのナイスタイミング。さらにはシュルレアリスムの画家、ルネ・マグリットの絵を彷彿とさせる袋を頭にかぶった男女の抱擁が随時挿入される不思議なPV。
いやあ、このあとカジャ・グーグーどこへ行くのだろうかなーなんて思っていたらどこへも行かず、知らない間にいなくなってた・・・。たしかバンド名を「カジャ」に変えたということは小耳に挟んだのですが。まあ、力のあるミュージシャンたちなので僕の知らないところで色々と活動しているのでしょう。再結成なども時折していたようです。
一方リマールはソロになって数曲ヒットを飛ばしたっけ。
その中で、日本ではむしろカジャ・グーグーよりも知られていると思われる「ネバー・エンディング・ストーリーのテーマ」。
この曲、僕が高校生くらいの時にヒットしていたけれど、同級生のちょっと面白い女の子が
「この曲さあ、最初の歌い出しがソープランドって聞こえるよね」
などと言い出して
「そおーぷらーんど」
とギャグとして歌っていたことがあったっけ。そんで久しぶりにさっきこの曲聞いたら、リマールやっぱり
「そおーぷらーんど」
って言ってて笑った。
80S回帰の気分