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超能力映画の系譜/PUSHを観てスキャナーズとか思い出す

 プライムビデオを人間をダメにするソファに寝そべりながら口を半開きにして観ていると、この映画がラインナップされていることに気がついた。

 最初トンデモないB級映画かと

PUSH 光と闇の能力者(字幕版)
 

  初めて見るタイトル。2018年と書いてあるけれど、ダコタ・ファニングが若すぎないか?もう成人してるでしょう?どうやらこれはアマゾンの表記間違い(プライムのラインナップに上がったのがこの日ってこと?)で実際は10年ほど前の映画だそうです。それにしてもその当時も一つも話題にならなかったのでは?いや、僕が知らないだけだったかもしれないけどさ。

 

 中身といえばいわゆる「超能力」を扱ったSF作品なんだけどテンポが悪く、なんかだらだらした感じ。映像はそこそこ綺麗なんだけど、それだけ。香港を舞台にしているのはあからさまにチャイナマネーを取り込もうとしているからだろう。クリス・エヴァンスダコタ・ファニングの無駄遣いといった感が否めません。

 

 大体、この手のパターンって最初はあまり能力を発揮できなかった主人公が何かの機会に覚醒して最後は無双、というはずだと思うんだけど、なんだかクリスは最後まで冴えないのだ。本当に最後だけ取ってつけたようにエレベーターに乗るシーンだけガンガンカッコイイロックミュージックがかかって逆に興ざめ。

 キャプテン以外のヒーローを演じたらこんなに情けない顔になるのか・・・。加えて超能力者たちの能力もなんだかイマイチわかりづらく(「ウォッチャー」とか「シャドー」とか、映画内だけで完結している呼び名がうざったい)、ところどころ飛ばし飛ばしでようやく見終わったという感じ・・・。

 

 「超能力」なんていうとざっくりしているけれど、僕がこの能力について知ったのはおそらく「ドラえもん」をはじめとする藤子不二雄作品からだろう。ドラえもんのどの話だかは忘れてしまったけれど、「サイコキネシス」「テレポーテーション」「クレヤボヤンス」などの言葉を初めて知ったのだ。そして藤子作品では「エスパー魔美」をはじめとする超能力者の活躍を描いた作品が多い。

 藤子作品の多くの超能力者は普段はその力を隠しているけれども、いざという時にその力を発揮し、事件を解決に導く。ストーリー構成上全く正しい活躍の仕方なんだろうけれど、彼らにはその力を制御するすべがあるし、何よりも選ばれし者である。そして、エスパーは、カッコよかった。

 

 ユリ・ゲラーは僕らのヒーローだった。確かその当時ユリがテレビ出演して、お茶の間に超能力を送りますみたいなコーナーがあったんだけど、その直後にテレビのスタジオに電話がじゃんじゃんかかりまくって曰く、

「壊れていたウチの時計が突然動き出した」

「スプーン曲げに成功した」

・・・

だってさ。平和な時代だ。

 

 昭和のテレビでは清田くんというトリックスターも超能力者として活躍していたがいつの間にかそういう人物はなりを潜め、ミスターマリックのような超魔術といった形で世には現れていた。

 むしろ最近は「能力者」なんて言い方の方が流行っているのかね。そういえば何年か前のキングオブコントで、しずるが能力者のコントをやっていたけれど、むちゃくちゃ面白かったなあ。 

            パロディとしても秀逸。BGMの使い方も上手い

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 さて、僕が中学生くらいの時にだったろうか、エスパーはカッコイイ、という概念を根底から覆したのが僕の大大大好きな監督、デビッド・クローネンバーグが作ったこの映画スキャナーズだった。

                  頭部破裂 閲覧注意

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 実際にこの映画を見たのは何かのリバイバルでたまたま友人と見た時だったんだけれど、ものすごいインパクトがあった。

 超能力者は人のためにその能力を役立てるのではなく、むしろその能力ゆえに世から逃れなくてはならなかったのだ。考えてみればこれは至極当たり前の話だ。テレパシーは都合の良い時だけ相手の考えを読めるのではなく、リアルタイムで相手の考えていることがこちらにどっと流れ込んでくるのだ。それゆえに主人公のベイルは苦しみ、ホームレスに身をやつしている。しかしその兄レボックは額に穴を開けることにより、その声を排除することに成功し、エスパー=スキャナーが支配する世を作ろうとする。その手始めとしてスキャナーの公開実験に参加し、ごく力量の少ないメガネでハゲのスキャナーの頭を爆発させる!

 

 何度かこのブログで触れてはいるけれど、このクリス・ウェイラスが担当した頭部爆発は当時相当な話題となり、夕飯時のお茶の間に当たり前のようにこの映像が流れていてびっくりした記憶がある。あの頃って結構そういうCMにはテレビは無頓着で確かオーメン2だかの、エレベーター人体切断シーンとかも普通にCMで流れていた記憶アリ。小学生の僕はそれを見てしまい、底知れぬ恐怖におののいていた。

 ラストの兄弟対決シーンはハワードショアの劇的なスコアがバックに流れる中、ものすごい超能力戦が展開され、最後にはベイルの両目が吹き飛んでしまう!特殊メイクはエクソシストでその名を一躍有名にしたディックスミスだったはずだ。

          今見ても凄まじい。マイケルアイアンサイドが若い

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 この映画を見た直後、しばらく僕は高校の友人の「ぶうちゃん」とスキャナーズごっこをして遊んでいた。どちらかがうーんと超能力をためる仕草をしたあと、「うぁっ!」と叫ぶと同時に、もうひとりは壁に吹き飛ばされる真似をするのだ。高校生ですよ、それやってたの。あんまり面白いので、同じ部の女の子の前でそれを披露したら結構ウけて、いい気になっていたあの頃はもう二度と戻らない。

 

軽い超能力がほしい。10分先の未来が読めるとか。あれ、ニコラス・ケイジの映画でそんなのあったな

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