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THE WHO/「WHOS NEXT」&ナカノさん

  僕の所属していたバンドサークルにTHE WHOをやっていた先輩たちがいたという話。THE WHOをやるなんて当時からして珍しかったと思う。世はバンドブームで原宿ではホコ天が毎週のようににぎわい、「バンドやろうぜ」なんて雑誌が創刊されたくらいだ。思えばそんな風潮の対極にあったサークルだった。

 

 さてそのWHOバンドのギタリストのナカノさんは僕より2学年上の先輩だった。非常に優しく面白い人で、皆にも愛されていた。

 そのナカノさん、冬になるといつもオレンジ色のコットンのジャンバーを着ていた。ナカノさん毎日、毎日オレンジジャンパー。

 こんな感じ。フードがついていたかな?空調服って!

 

 僕の大学はマンモス校だったので食堂がいくつもあり、たくさんあるサークルは大体どこかの食堂の一角を「たまり場」として専有していた。僕らのサークルにもたまり場があって、どの時間にも誰かしらがいてまあ退屈はしなかった。今ではどうだか知らないけれど、僕らのたまり場の食堂は5時を過ぎるとアルコールが解禁になるのだった。と同時に皆で有り金を出してはビールを買い、毎日酔っ払っては誰かの家になだれ込んでそのまま泊まるなんてことはザラだった。

 

 ナカノさんの話。

 ナカノさんは前述のようにいつもオレンジのジャンパーなのでかなり遠くからでもその姿が確認することができた。例えばたまり場にいるときに「あ、ナカノだ」という誰かの声でふと顔を上げると100メートル以上向こうからオレンジ色のジャンパー人が歩いてくるではないか。そういうわけでオレンジ=ナカノさんみたいな図式が出来上がって、先輩たちはそれをネタに笑ったりしていた。

 ところがある日、ナカノさんが新品のレザーのボマージャケットを着て登場!B3という形のもので、数万円したらしい。大枚はたいて買ったそのジャケットをナカノさんはかなり気に入っていたようだった。

   こんな感じのヤツ

  そうそう、そのジャケットを着て新学年の学生証のために証明写真をナカノさんは撮ったのですよ。そしたら、背景が白いからこのボマージャケットの襟の部分の白が背景に溶け込んで、顔だけが妙に浮かび上がっているというヘンな写真になり、皆それをみて大笑いをしていたっけ。

 

 さて次の年の冬のことだ。いつものようにたまり場にいた僕は不思議な光景を見た。向こうからオレンジ色の服が歩いてくるではないか。心なしか暗い顔をしている。

 「あれ、ナカノさん、あのボマージャケットどうしたんですか?」

 「それがさあ、盗まれちゃったんだよ・・・」

 「ええ!どこでですか?」

 「家で。」

 「家!?泥棒?」

 「いや。俺の部屋一階だろ。で、部屋にあのジャケットを窓際にかけておいたら、いつの間にかないんだよ!」

 「えーっ!そんなことってあります?」

 「だから、俺が部屋にいるあいだ、誰かが窓から盗っていったとしか考えられないんだよ!」

 何とも不思議な話だ。部屋の窓を開け放しておいたら、その横からスッと手を伸ばして盗んだってこと?そんなことある?でもナカノさんは頑強にその説を主張していた。だってナカノさんが部屋にいる間になくなったんだから。

 それにしても突然ジャケットが消えたらびっくりするよね。つうか、その服を前から誰かが狙っていたのだろうか。今となっては詳しいことはわからないけれど、ナカノさんも災難だった。

 結局ナカノさんは卒業までオレンジジャンパーで過ごした。

 

   「WHOS NEXT」の話一切ここまで無し!

 

 すいませんねえ、検索で来られた方、「なんだこれ」と思ってすぐにやめてしまったことでしょう。こんなんですよ、僕のブログ。しかもアルバムの記事(大したこと書いてない)の字数のほうが少ないんですよ!WHOS NEXT詐欺! 

 

 そんなナカノさんがやっているWHOのバンドは充実していた。彼らは「TOMMY」アルバムの曲を一通り演奏すると次は「WHOS NEXT」の曲に挑戦したのだ!

 名盤のオーラ漂っている 

Who's Next

Who's Next

 

  このアルバムはロック史上に残る名盤だ。この時代に既にピート・タウンゼントシーケンサーを取り入れ、新たなロックの道筋をつけていたのだ。一曲目のババ・オライリィからして素晴らしい。

 伝説的なこのライヴ、完全にピートは目がイっている。ナカノさんは「こいつ絶対クスリやってるよなー」といつも言っていた

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 先輩たち、確かこの曲はあまりにシーケンサーのプログラムが複雑なのでさすがにやらなかったようだ。しかし、こちらの「ウォントゲットフールドアゲイン」(無法の世界)は人力でキーボードをこなし、見事演奏しきっていた。あの頃のビデオ観たいなあ。

           何この顔。完全にピートは昇天している 

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 本物に関しては、中盤のレーザー光線の演出からの爆発がもうかっこいいのなんの。最後にキースに抱きつくピートの姿が非常に微笑ましい。

 

 とにかくこのアルバムは素晴らしい。僕が言うまでもなく素晴らしいのは当然だがやっぱり素晴らしい。捨て曲が一切ない。バーゲンやビハインド・ブルー・アイズなども捨てがたいけれど、ゴーイング・モービルみたいな間に挟まれている曲が僕は好きだった。たしかこの曲のリードヴォーカルはピートなんだよね。

             途中で「ピッピー」とかいうところ好き

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 あとは唯一ジョンの作曲である「マイ・ワイフ」

             ドラムがキーズじゃないんだよなー

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そしていよいよ「四重人格」にたどりつくわけですね

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