コニー・ウィリスは読んだほうがいいですよ!
彼女(もう72歳なのか!)の描く小説は、SFといってもそんなに難しい世界観があるわけではなく、むしろ日常性の中に味付け程度にSF要素が絡まってくるのです。こちらの『航路』は僕の生涯五本の指に入る作品でした。
えてしてコニーの長編はフルボリュームですが、苦もなく読める
一応その感想をこちらで書いてます
続いて『ドゥームズデイ・ブック』で再び恐れ入る。
どちらも思いもよらないシリアスな展開を迎える大傑作。
そうして現在中編『リメイク』を読みつつも、同時に読み始めた『犬は勘定に入れません』をすぐに読み終わってしまった。
この『犬は~』はタイムトラベル小説。『ドゥームズデイ~』の後の出来事となっている。ただ、ドゥームズデイの主人公キヴリンは登場せずに、脇を固めたダンワージー教授やフィンチ、名前だけだがバードリといったキャラクターが登場し、ドゥームズデイを読んだ人にとってはああ、地続きの作品を読んでいる!にやり、となること請け合いだ。
これまでのコニーの長編ではわかりやすい「イヤな奴」が必ず登場していた。『航路』ではミスター・マンドレイク、『ドゥームズデイ』ではギルクリスト教授だ。そしてこの『犬は~』にもレイディ・シュラプネルという恐ろしきキャラクターが登場する。
ああ、やっぱり今回もいた!となんとなくホッとしてしまう。レイディ・シュラプネルは大金持ちでオックスフォードの史学部に援助している。そして彼女は2057年現在、コヴェントリー大聖堂という1940年11月14日ナチスドイツによる空襲で焼けてしまった教会の再建に夢中なのだ。
「神は細部に宿る」を信条とする彼女は教会の内部や備品の調査をさせるため、過去の様々な時代に史学部のあらゆる人材を送り込む。彼女の援助がなくなればネット(航時をするための出入り口)の維持は不可能であるため、皆彼女の命令には背けない。そしてまた彼女の強制力は絶大なのだ。
ネッド・ヘンリーもそのようにして徴用された大学院生だ。
彼は空襲直後の大聖堂で「主教の鳥株」という名の花瓶(これがまたなんだかよくわからないのだが、鋼鉄製の様々な装飾を施された花献台のようなもの)の行方を探していた。この「主教の鳥株」というアイテムの扱いが鍵となってストーリーは進む。
レイディ・シュラプネルにとってこの花瓶は先祖である「トシー」という女性の人生を一変させたもの(トシーの日記にその日のことが克明に記されていた)として特にこだわりが強いものなのだ。
しかしネッドがどんなに探しても、主教の鳥株は見つからない。空襲で焼けるほどやわなアイテムではないのだ。一体どこへ消えてしまったのか。空襲の直前にタイムトラベルした時には確かにそこにあった鳥株は空襲後に行方をくらましてしまったのだ。こうして何度も現代と過去を行き来させられたネッドは重度のタイムラグ(この設定も素晴らしい。各人によって症状は変わるが、とにかくボケたり精神が高揚したりと様々な症状が発現し日常生活が困難になる)に陥り二週間の絶対安静を言い渡される。しかしレイディ・シュラプネルがそれを許すはずもない。
病院を抜け出したネッドはダンワージー教授のもとへと逃げる。そこでダンワージーは彼の状態に鑑み、休養を兼ねてヴィクトリア朝へ二週間程送ることにする。しかしただの休養ではなく、なんと彼には重要な任務が課されていたのだ!
続きますよ