昨日まで怒涛の勢いだったクリエイターのお話でした。その続き
僕は大学を卒業してもフリーターとなってバンドをやっていたのでかなり暇だった。ただ、さすがに将来に対するぼんやりとした不安は拭えないので、一応逃げ道も作ってはおきました。とある資格を取るために勉強しつつ、その他の時間は本を読んで過ごしていたのです。今思えばこれが良かったのか悪かったのか、まあ少なくとも仕事を始めとしてこのブログなど、様々な役には立っています。あの時間がなければ新潮社の日本文学全集など読破することはできなかっただろう。
でもさすがにそれでも時間を持て余すわけ。それで僕は人恋しくなり(大学のそばにまだ住んでいたので)夕方になるとバンドサークルの後輩と、留年した友人のたむろしている大学のたまり場へほぼ毎日行くということを繰り返していた。先輩や同級生には留年者が何人もいたので僕がそこにいても違和感がないのだ。そういうぬるま湯の中で僕はぬくぬくと無駄に20代を過ごした。他のほとんどの同級生はバブルの恩恵に預かって大企業に就職して働いていたというのに。
そんな折、学祭の前夜祭のライヴの枠が一つ余っているのでなるかみさん、何かバンドやりませんかという提案があった。そこで僕はクリエイターをやりたくなり、昨日登場した後輩のアイビーとクリエイターバンドを組んだのだった。ギターとヴォーカルは僕が担当した。
曲は
「BLIND FAITH」
「WHEN THE SUN BURNS RED」
「TERRIBLE CERTAINTY」
「BETRAYER」
「TERROR ZONE」
という最強のレパートリーだ。
歌詞を覚えるのは面倒なので全部ウソの英語をそれらしく歌い、キメの部分だけタイトルを絶叫というお決まりのパターンで演奏。今思えばよくこんな曲をやりきったもんだ。
今思い出してもこの時のライヴはかなりエキサイティングだった。
演奏うんぬんよりも、ここに書くにははばかられる過激なパフォーマンスがメンバーとは何の関係もない別の後輩によって行われ(今の時代ならツイッターで即拡散して炎上間違いなしレベル)、それはそれは盛り上がったのだ。ビデオも残っていて、何度もみんなで見直しては爆笑していたのだが、数年前にそのビデオは古いVHSなのでテープが切れてしまった!なんとか復活させたいが、心の残像として秘めておくべきものかもしれない。
ちなみにその過激なパフォーマンスを公共の場で行った後輩のあだ名は「ロック」だった。彼はすぐに服を脱ぐ癖が有り(推して知るべし)、友人の家やサークルの合宿などではひたすらそれで笑いをとっていた。そしてそのうちに彼が脱ぐときには、みんなが「ロッキーのテーマ」を歌うようになり(そのいきさつは不明)、あだ名が「ロッキー」→「ロック」となったのだ。だから音楽のROCKとは全く関わりのないあだ名なのです。
そのロック、コンビニでアルバイトをしていたのだが、あろうことかそのコンビニの8歳上の主婦と不倫!全員驚愕。ロック19歳。
当時僕らはのサークル員はコアな人間がそれなりに集まっており、自らを「軍団」を称して兄弟のように親密な関係を保っていた。そういう集団内では自然発生的にスラングが生まれる。たとえば疲れたとか、どうしようもない状況を「デッド」という言葉で表現していた。
「うわー、寝坊した!デッド!」
「あいつデッドぽいなー」
「あのドルアイの歌とかもうデッド!」
・・・どうです、意味不明でしょう。今で言う「ヤベー」と同じようなもんですよ。
他には「ぼろい」という言葉を逆さにして「ロイボ」と表現し、
「あー徹夜で体ロイボ!」
などと普通に会話していたのだった。
さて、そういうスラングの中の一つに「タック」という言葉があった。
「タック」、なんだかお分かりですか?さあ、お考え下さい。
・・・さて、正解は「帰宅」です。
「帰宅」→「きたく」→「たっく」→「タック」という語形変化でした。
くだらねー!これが最高学府に通う人間たちの会話だろうか。
だから、雨が降っている日に鍵が空きっぱなしの友人の部屋を訪れた時に、しばらく待っていたのに誰も来ないので泣く泣く帰ろうとなって
「雨中ロイボタック」
と書き置きしておけばだいたい意志の疎通はできた。
だいじょうぶですか、読んでいただいてますか。
ロックの話に戻ると、くだんの不倫の相手の女性の名前が「すみよ」という名前だった。だからロックは事あるごとに「すみよが泣いているぞ」とか「すみよにパフォーマンスみせるっつうのは」などといじられていた。
そうこうしているうちに不倫がバレてすみよは別居、アパート独り住まいとなったらしい。しかしロックは律儀な男なので毎晩彼女のもとへと通っていた。だから友人の家で飲み会などをして盛り上がっていても、10時頃になるとロックはやおら
「じゃ私はそろそろ・・・」
と座を立ってしまうのだ。そしてその帰宅行為に付けられた名前が
「すみよタック」
だった。だから大体ロックが中座しそうな様子を見せると
僕ら:「何?すみよタック?」
ロック:「はい」
僕ら:「いやいやいや、すみよ待たせでしょ!待たせ!待たせ!もしくは捨て!捨て!」
ロック:「いやー、すみよタック!」
みたいな会話をしていたわけだ。いやあ戻れるものならあの頃に今すぐ戻りたい!
さて3年後くらいかな、ある晩僕のアパートにロックが突然やってきて、左拳をえらい勢いで差し出してきた。
その薬指に光るは婚約指輪!
ロック結婚!すげえ!責任とったな!
しかし数年後、結局ロック離婚!結局別の女性と結婚し1男を設けております。今でも年賀状だけはかろうじてやり取りしているのでその情報を僕は持っている。
ここまでクリエイター、一切全くもって関係ない!
いやあ、引きが長すぎると自分でもこの時点で思いますよ。今までで最長記録じゃないですか、この引き。2500文字をロックの話に費やしてるんだから。
さて、クリエイターの新譜への期待がパンパンに膨らむ中届けられたこちらのアルバム「RENEWAL」。
なんだこのジャケット。今聴くとこれはこれでアリ
【輸入盤】KREATOR クリーター/RENEWAL(CD) 価格:2,553円 |
このアルバムが出された時代はオルタナロック前世でパンテラ、KORNやリンプ、デフトーンズなどのいわゆるニューメタルとかモダンヘヴィネスと呼ばれたサウンドが全盛だったのだ。そういう中でメタルバンドたちも変革を迫られた時代だった。あのスレイヤーのトム・アラヤでさえ、「SOUTH OF HEAVEN」収録の以下の曲で生歌を披露し、顰蹙を買っていた時代だ。
そしてクリエイターもその流れに与したのか、それこそ「RENEWAL」というタイトルを引っさげてこのアルバムをドロップしたわけですよ。
「BURRRN!」か何かの事前情報で「クリエイターは大胆な路線変更を行った」ということが書いてあり、いったいどうなったんだろう?と思いつつも発売日にこいつを買い、聴いた。
なんか音がだいぶ乾いてるな・・・でもカッコイイントロ・・・おっ速くなった・・・ってミレ、その声どしたの!
完全にヴォーカルスタイルが変化しているじゃないか!あの絶叫型の歌い方は一切なりを潜め、ただヤケクソにがなっているだけというヴォーカルが全てを支配していた!
ううん、クリエイターどうした・・・。今聴くと再評価できるこのアルバムも、それまでのアルバムの流れからすればファンとしては複雑な出来だと言わざるを得なかった。
そうそう、この曲のアレンジ部分に触れさせてよ!特にドラムのキックですね。ファストな曲だからドラムは通常ドタドタドタドタ(「ド」の部分はバスドラ、「タ」の部分はスネア)という形になるのがセオリーなんだけど、この曲は
ドタッタドタッタドタッタドタッタ(注意してバスドラを聴いてください)
というテンポでバスドラがなっており、何となく物足りないのだ。
この省エネドラムはよくメタリカのラーズ・ウルリッヒがやるパターンで、例えばあの有名な「バッテリー」のライヴなんかでもこのドタッタリズムで叩いていることが多い。このあたりは少しバンドに詳しいファンにはすぐバレるのでよく指摘されているのだ。だからその筋ではラーズのドラムの評価は低いんだけど、彼あってのメタリカなんだからそれはそれでOK!
そうして笑ったのはこの「WINTER MARTYRIUM」のコメント欄に英語で
Ventor in Lars mode.
「ヴェンター(クリエイターのドラムの名前)はラーズモードに入っている」
と書いてあったことだ。やっぱり同じこと考える人はいるものですね。
いや、それにしても今日でクリエイターの記事書き終わると思ったらまだ続きますよ!
ヘヴィーメタルはいいぜ