最近プライムで観た70年代邦画の記事ばかりしか書いてませんが・・・
映画『少林寺拳法』は千葉真一主演、当時の東映を代表する、あの鈴木則文監督の作品。
とにかく喧嘩ばっか
このあたり、大体YOUTUBEでも観られますね。ちなみに予告編の前半のシーン、映画に出てきません
太平洋戦争集結間近、千葉ちゃん演じる宗道臣は義和拳という武術を体得しており、それを活かして中国戦線で諜報活動を行っていた。冒頭、中国人のゲリラ兵の中に混じって情報を得た千葉ちゃんだったが、正体がバレたため得意の拳法で敵をなぎ倒し、更にはその場にあった機関砲をぶっぱなして部屋を豪快に破壊する。
そのまま機関砲を持って日本軍の作戦本部に戻った彼が聴いたのは終戦の報だった。あまりの憤りに作戦本部内でも激情のほとばしるまま機関砲をぶっぱなす千葉ちゃん!危ないって!
で、千葉ちゃん結局日本に帰って大阪のヤミ市で戦争孤児たちを養いながら喧嘩をしては警察にぶち込まれるということを繰り返していた。このあたり、終戦直後の雰囲気を存分に味わえる。人々は食うや食わずの生活でそれでもたくましく生きている。なんだろう、どこかでこういう雰囲気の話を読んだことがあるな・・・と思ったら、そうだ、開高健氏の『日本三文オペラ』だった。この話も終戦直後の混乱した大阪でたくましく生きる庶民が描かれていた。この映画はそれをまんまビジュアル化。
開高健氏の初期の大傑作
日本に帰ってきた千葉ちゃんが母の墓の前で子供のころを回想するシーンがあるんだけど、その子役が『砂の器』の名子役、春田和秀氏でおおっ!と思った。
さて、千葉ちゃんはある日、進駐軍の横暴(新興ヤクザが関わっている)に耐えかね、米軍将校二人を後遺症が残るほどに叩きのめしてしまう。
捕まった千葉ちゃんはアメリカに引き渡されれば良くて終身刑、ヘタをすれば死刑だ。しかし、ここで出ました!丹波哲郎様!彼が演じる警察署長が
「大阪から姿を消せば見逃してやる。ボカァね、君みたいな日本人がまだいることが嬉しいのだよ」
と密かに彼を脱走させる。
そうして千葉ちゃんは流れ流れて四国は香川県で少林寺拳法の道場を開いていた。
しかしここでも彼の正義感は暴走し、地元ヤクザ(安岡力也氏!)に「喧嘩坊主」とあだ名をつけられ目の敵にされていた。そしてとうとうその非人道的行為(行きつけのうどん屋の娘が暴行されてしまう)に怒った千葉ちゃんはとんでもない仕返しを力也兄ぃにするのだ!ここはぜひその目でご確認いただきたい。ただし、あまり気持ちの良いものではありませんが、ギャグにはなってます。
それにしたって、千葉ちゃんは強い。セガール並みに強いのだ。何人束になってかかったとしてもかなわないほど強い!千葉ちゃん無双映画!
ここで一度千葉ちゃん、大阪で面倒を見ていた娘さんが危篤の電報を受け取る。彼に看取られて息を引き取る娘。その直後、
「俺に足りなかったものは愛だ!」
と唐突に悟る千葉ちゃん。しかし、その後の彼に愛の気配は全くナシ。
香川での抗争は更にエスカレートし、弟子のひとりは腕を切り落とされ(その妹役が志穂美悦っちゃん)、ついには死者まで出てしまう。愛どころではない。
怒り心頭の千葉ちゃんはついに小池朝雄親分の料亭に単身乗り込み、やくざ一家相手に大暴れする。ここでも相変わらず強い千葉ちゃん、どんどん敵を叩きのめす。一回だけ長ドスに腕を切りつけられるがものともせず、とうとう拳銃をぶっぱなしまくる小池親分を追い詰める。木の陰に隠れて親分を組み伏せた千葉ちゃん、渾身の力を込めた拳を胸に何度も叩きつける!口から何か出てくる親分!なんだ?うわ、骨!?
気持ち悪!おまけに肋骨が飛び出して死ぬという壮絶な最後を遂げる親分。
殺人じゃん!
ところが一家をやっつけると今度は海を見下ろす丘で拳を突き出し、脚を蹴り上げる千葉ちゃんと大量の門下生の映像に切り替わる。そして
「正義を伴わない力は暴力なり。力を伴わない正義は無力なり」
というパスカルの警句(WIKI調べ)が荒々しい字体で画面に登場し、ジ・エンド。なんだこりゃ!あんなに人殺しておいて大丈夫なの?ていうか、宗道臣って実在の人物でしょ?まあフィクションとしての映画ですけど・・・。さすが70年代日本ムービー、やってくれる!
ある程度破天荒さは必要ですかね