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ドラコニア逍遥の続。澁澤龍彦展にて

 ブレードランナー2049を観たのでこちらの話が飛んでしまった。

「ドラコニア」とは龍彦の「龍」の国、竜の支配する領土という意味だそうだ。   澁澤龍彦展、どうだったか。

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前回のあらすじ

otominarukami.hatenablog.com

 

 内部は撮影禁止だったので写真はないんだけど、僕の手持ちの本でそれを再現できればと思います。まず会場に入るといきなり彼の愛用していた地球儀が飾られている。澁澤氏は球体が好きであったらしい。

 

こちら会場で購入したポストカード。鎌倉にある自宅、書斎の風景。部屋を埋め尽くす本、本、本。そして机の上にある地球儀がそれだ。

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 そうして次には彼の集めたオブジェや絵がいくつか飾られていた。中西夏之氏制作の「コンパクト・オブジェ」の実物を拝見。

        

 次にメインの展示である自筆原稿の数々。まずは遺作となった『高丘親王航海記』のスケジュールや自筆原稿を丹念に鑑賞する。渋澤氏の字はかわいい。非常に読みやすい字だ。ケースの横にはさりげなく氏の愛用していたトレードマークのサングラスや愛用のパイプが置かれており、「ああ、これがあのサングラスなんだな!」と感無量。

 

 小説はそんなに残してはいないんだけれど、その博学を生かした奇想天外な小説はめくるめく幻想。

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 小説といえばこの『高丘親王航海記』が有名だけれど(平安時代の実在の人物、高丘親王が天竺を目指し旅をする。途中様々な幻想的な出来事に遭遇する。歴史的事件「薬子の乱」の藤原薬子が重要人物として登場する)、僕は初期の短編『撲滅の賦』や『エピクロスの肋骨』などが好き。どちらも不思議な作品です。

 

 今はワープロソフトで簡単に間違いや原稿の修正が出来る時代だが、自筆原稿の場合はどのように作家が作品を完成させていったのかがひと目で理解できるので非常に興味深い。そして肉筆から作家の息遣いまでもがこちらに伝わってくるようだ。

 細かく見るとキリがないので(午後から友人と会う約束もあったので)ある程度割愛しながら鑑賞する。すると展示の中に書斎を再現した(といっても断片的にだけれど)コーナーがあり、ファンにとっては有名なあのオブジェ棚が飾られていいるではないか!

   

 次にまさかと思ったが土井典氏制作のハンス・ベルメール球体関節人形が展示されており、こちらもちょっとした驚き。事情を知らない人が見ると眉をひそめそうなオブジェである。

        

 

 四谷シモン氏の少女人形は飾ってはいなかったが、彼の家に飾られていたいくつかの絵画は出品されていた。

  

そのほか関連した雑誌(「アン・アン」!や「血と薔薇」など)の展示や高丘親王航海記の裏表紙に合った自筆の地図も展示されていた。

 

      

 あるコーナーでは暗黒舞踏家、故 土方巽氏の弔文を読む音声が繰り返し流されており、思いのほか声のトーンが高いことがわかる。

  

 そのほか埴谷雄高氏あてに送った書簡は鳥肌もの。この二人の交友は僕にとってバットマンVSスーパーマンみたいなものだ。違うか。

 また氏は晩年咽頭がんを患い、それがもとで他界してしまう。手術により、声を失った彼は筆談で妻や、友人たちと意思疎通をしていたのだが、そのいくつかのメモも飾られており非常に興味深いものだった。

曰く

「うどんがたべたい」

「チェーンソーはしらないでしょ」

「ブスという言葉を使ってはいけない」

などと彼の著作とはまた違い、ほのぼのとした印象が大変微笑ましかった。

 

とにかくファンにとっては充実の内容だった。まだやってますから、興味のある方はぜひお出かけください。さて、明日は友人とのぶらっとプチトリップの報告をします。

 

ヘビーメタル小説の方はおかげさまで5700PV行きました。こちらのジュブナイルも読んでください。

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