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ダンケルク観ました。

       クリストファー・ノーランの期待の最新作「ダンケルク

 

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 まず見終わった直後の感想は・・・「なんかダークナイトライジングを見たときの気持ちと同じ」だ。

 

 クリストファー・ノーランといえば新バットマン三部作と「インセプション」「インターステラー」という傑作を次々とヒットさせ、今一番新作が待たれる監督だ。このダンケルクも興行成績はかなり良いようだ。

 僕は「インセプション」のスケールの大きさとその世界観の凄さ(キャスティングもよかった)にドハマりし、「インターステラー」でその圧倒的な映像とストーリーテリングに酔いしれた。僕が言うまでもないけど、ノーラン、すげえ!と。

  

僕の持っているノーラン作品関係。インセプションはサントラもよかった。ギターは元SMITHのジョニー・マーが担当!

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         注意!以下ダンケルクのネタバレありますよ!

 

 で、今回のダンケルク。正直、映画は地味な印象だ。おそらくそれは戦争映画だというのに、大規模な戦闘シーンがないからだろう。スピルバーグの「プライベート・ライアン」がその先鞭をつけた戦争リアリズム映画はもはや既視感を覚えさせるくらいに量産されている。

 思いつくだけでも「ブラック・ホーク・ダウン」「硫黄島からの手紙」「パシフィック」(映画ではないけど)「フューリー」・・・そして残念ながら見逃してしまった「ハクソー・リッジ」。これらの映画の特徴は爆音とちぎれる手足、生々しい死体、ぶれる手持ちカメラ。しかしダンケルクには一切それがない。僕はきっとその手のシーンはないだろうと予想したがやはりその通りだった。当然、ノーランはそれを意識していると思う。爆撃シーンや銃撃シーンはあるが、残虐描写はゼロ。一昔前の戦争映画のようだ。ステロタイプに陥った戦争映画に対するアンチテーゼなのか。

 

 演出は超一流。音楽も超一流。ルーカスやスピルバーグにはジョン・ウィリアムス、ティム・バートンにはダニー・エルフマン。そしてデビッド・クローネンバーグにはハワード・ショアというように、ノーランにはハンス・ジマーとばかりに冒頭から緊張感のあるストリングスのスコアに乗せて時計のチッチッチッチという音が重なる。この時計の音には、ノーランのかなりのこだわりとメタファーが込められている。

 

 ストーリーはあってないようなものだ。「ナチスドイツにフランスで追い詰められたイギリス軍がダンケルクを脱出する」過程を僕らは目の当たりにする。主人公もはっきりと定まってはいない。基本的には「英国軍の一兵士」「救出に向かう漁船の漁師」「スピットファイアパイロット」の3つの視点プラス「海軍指揮官」の立場からストーリーは描かれる。ただ、英国兵士にとっては一週間の出来事、漁船の乗組員にとっては1日の出来事、パイロットにとっては1時間の出来事という違いから、それぞれが感じている時間軸が少しづつずらされているので、最初は理解しづらいかもしれない。

 

 そもそもノーラン作品では「時間」が大きなテーマとして常に扱われている。デビュー作の「メメント」は記憶をすぐになくしてしまう男が10分ずつ時間をさかのぼっていくという複雑な構成だったし、バットマンは別としても、「インセプション」では夢の階層を下るに連れて時間の進みが遅くなり、時計の秒針の進みがその都度画面に映し出される。「インターステラー」では重力の影響である星での1時間は地球時間の20年に相当し、主人公の娘はあっという間に自分よりも年上になってしまう。

 ダンケルクもあからさまに時計の音が鳴り響くほど「時間」がひとつのモチーフとして扱われている。観客は同じ場面をそれぞれの登場人物の視点から少しずつ時間を巻き戻して見ることになり、混乱する人もいたのではないだろうか。

 ノーランにしてみれば「体験」をしてもらいたいという意図があるらしい。確かに大スクリーンで観るこの映画は現実のあるがままの「体験」にかなり近いものである。

 僕らの現実にストーリーなどない。ただ事実が積み重なって過ぎていき、結果として時間を振り返るとストーリーらしきものが見えてくるだけだ。終わりも始まりもない。そして常に現実は不条理だ。だからこそギブソンや少年は死んでいく。少年を死なせた兵士はその事実を知ることなく、どこへともなく去っていく。それを考えるとこの映画を「感動作」みたいに捉えるのはどうも違う気がする。

 

 さて、冒頭の感想について・・・僕は「ダークナイトライジング」に期待しすぎて逆にがっかりしてしまった記憶がある。で、「インターステラー」のあとの作品だから同様の期待はあるじゃないですか。ただ、ダンケルクはそんなに複雑な話じゃないし上映時間も短いからなーというフラットな気持ちで鑑賞したら結果そう思ってしまったのです。だから正直、「うおーすげえ!ダンケルク!」とはならなかった・・・。

 もちろん空中戦はすごいし船はあんなにすぐに沈没するのかという驚きはあった。トム・ハーディキリアン・マーフィーといったノーラン映画のいつものメンツは出ていて安心する。でも結局IMAXでしかこの映画の本来の凄さは理解できないらしい。しかもそれを見ることができるのは大阪だって?無理!

 

 あとどうでもいい疑問。

 30万人を脱出させたって新聞には載っていたけど、どう見ても映画では千人くらいしか助けていないんですけど・・・そこらへんをもう少しわかりやすく見せて欲しかった。あと、スピットファイアに乗ってたトム・ハーディ、どうしてわざわざドイツ軍の陣地で着陸したかね?最後に飛行機を燃やすのならパラシュートで降りて英国軍の撤収と共に帰れば良かったのでは?意図的な演出?

 

      そうそう、SWのエピソード8のチラシが出てた。

 

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 なんか煽ってんな。まあ、きっと少なくとも3回は見るんだろうけど。エピソード9は結局JJエイブラムスがやるってね。そういえば、キャプテン・ファズマが登場するらしいけど、あの状況でどうやって脱出したの?きっと説明ないんだろうなー。

 

 さて、来週はいよいよエイリアン・コヴェナント!大丈夫だろうな?

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